Strafkolonie-キャラクター資料館【本家/学園共用】
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fld_nor.gif 【Goetia】
投稿日 : 2020/05/15(Fri) 09:12
投稿者 ガイーシャ
参照先
――その意味は「呪術」
その更なる源泉は「嘆き」「慟哭」「苦しみ」

其れは呪いから生まれ、呪いに生かされ、呪いと生きている
歪んだこころの断片。
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件名 Rexxxx
投稿日 : 2021/09/20(Mon) 14:50
投稿者 ガイーシャ
参照先
繰り返す。
繰り返す。
狂っては戻って。
狂っては戻って。
戻っては狂って。
戻っては狂って。
繰り返す。
繰り返す。
いつ崩れるとも知らぬ場所だという戒め。
いつ壊すとも知れぬ場所だという戒め。
闇の中でもはっきりと浮かび上がる影の子に手を伸ばす。
もう離したくなんてないのに、夢の中での君は僕の作ったまぼろしにしか過ぎなくて。
すぐにほどけてしまう。
だって、本当の、ほんものの、君は、どこにもいない。
思い出しては遠のく記憶。
遠のいては思い出す記憶。
覚えているのに忘れている記憶。
忘れているのに覚えている記憶。
それでも僕はまだ生きていて
それでも僕はまだその手からすり抜けてないものがある
掴んで離さないようにしたって
またいつかどこかほどけることを忘れてはいけない
自らほどいてしまうことを忘れてはいけない
繰り返す。
繰り返す。
進んで戻って、変わって戻ってを繰り返す。
忘れて繰り返して、思い出して繰り返す。

きっとそれは「こわれてる」のだと、気付けたのはいつだっただろう?
そのことにすら気付けてない日はどれほどあっただろう?
どうせまた忘れる日々がつづく。

バラバラなそいつは、誰の手でも繋ぎ合わせることはできず、
どんな手を使ったとしても修復不可能なパズルの人格
絶対にどこかが噛み合わず
絶対にどこかが欠けている
そうやってそれでもカタチを何故か保っている
何故か人のスガタをしている

滑稽でも滅茶苦茶でもそれでも現世にいることを許され、求めている。
まだ「生きててもいい」
まだ「殺しててもいい」
まだ「笑っててもいい」

まだ――――――
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件名 Dream Land:
投稿日 : 2021/09/11(Sat) 20:01
投稿者 ガイーシャ
参照先

 廃墟と化した城下町、城壁さえもすべて崩れ落ちて、巨大な城からすらも煙が立ち込める。
 無数の硝煙と土埃が充満し、魔力が霧のように濃く立ち込め、方々で炎が未だに煉瓦や木材を燃やして灰を上げる。
 辺りは自らと兵士たちが撒き散らし、死体から生まれた無念や怨念が彷徨い、全ての元凶であったこの王国も今や他の不浄汚染地帯と変わらない有様となっている。
 かつての栄光も繁栄もどこにもない。それはこの世界のあらゆるところが、そうだろう。

 死体の山に座り込みながら、これまでの記憶を整理する。
 いいや、整理しきれないな。
 僕は死んだはずなのに、まだ此処に居る。

「――もっと"全盛期"ってのを見せてやりたかったけど、感覚が流石に曖昧になっていたか、記憶混濁のせいか、――それとも。」

「…ま、アイツらを"夢の中"とはいえ、殺さなくて良かった…のかなぁ?」

 鮮血残る機械腕で己のこめかみをつついて、首をかしげる。
 生命の気配はおろか、どの呼吸の気配を感じさせない荒涼の跡地に、ぽつりと一人の子供が泣いている。
 僕と同じ耳と肌。けれど色は違う。黒い髪をぐしゃぐしゃに乱して、緑の瞳を擦って、ないている。

「そんなに泣くなよ、生きてるだけ儲けもんだろ?」

「アッ、死んでたか!そうだね、死体だった!!アッハハハ!」

「……おいおい、ちゃんと"俺"自身が決めたことだろうよ」

「最初の、発端の発端なんて、当事者にはどうでもいいし、"僕"にとってもどうでもいい!」

「なあ? とっっっっっくに、被害者と名乗れる立ち位置じゃないんだぜ、お互いに立派な加害者だ」

 それでも泣き止まない子供を前に呆れの気持ちは抜けない。
 頬杖をつき、溜息を吐く。

「結局、"戻ってみても"、僕のほんとうの気持ちだとか目的だとか、なんのために、だれのために、生きて、死ぬか――何も、わからなかったなあ」

「いや〜〜〜実験は失敗というところかな!? 勿体ねえ」

「でもこれもトライアンドエラー。100回でも1000回でも思考実験を繰り返すって?」

「ま、そんな機会がもう一度来るような気配はなさそうだけど――……」


「…………目醒められると思う?」

「嗚呼、だからないてんの?」

「そうでもなさそうだなあ」

「……ま、永い刻を生きるのには慣れている。いや、このままだと退屈死するかもしれないが……、…………」

「……あ―― そう、そうか、……ハ。 フフ、フフフフフッ!」

「ハハハハハッ! そういうことかーぁ…」

「チョットは収穫があったようだ」

「僕は――――」
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件名 Dream Land:???
投稿日 : 2021/09/08(Wed) 10:52
投稿者 ■■■■
参照先

 照合
 確認

Material Spirit(素魂):Alibel
Compatible Vessel(適合者):Bella Wiseman
Lasting Assault Soldier(永続強襲型兵器):"Trigger"(系統:射撃手) No.666(錬成番号トリプルシックス)
*** LAS-T-666 ***

 以上

「...バイタル正常。解析しきれなかった"魔眼"だけが気掛かりですが。」
「...精神干渉不可。統一術式断絶。精神不安面はかなりあります。」
「...それでも行かせるしかないでしょう。」
「我々には、後がないのだから。」

 ようやく踏みしめた大地。
 開かれた門から見上げる、騎竜飛び交う赤い空。
 横から飛び出していく魔獣の車。
 その暴風に煽られても、笑うだけ。

「良いか、契約通りに遂行しろ。監視は常にいる、裏切った時点で貴様は処分だ」
『聞き飽きたな。何度も了承しているじゃないか、思考回路を支配出来ないことがそんなに不安かい?もっとニンゲン信じろよ』
「お前はニンゲンじゃない」
『アッハ!そうでした!』

 奴らの反応が面白くて何度も手を叩いて笑ってしまう。
 …って、ああ。まだ手枷がついてら。だる。

 そう思っていたら全て解除された。文字通り魔法のようにそいつらは粒子となって消えて、軽くなった赤い両手を握って開く。
 ようやっとクロスボウを渡された。
 おかえり、僕のBelial。寂しかったぜ、まったく!

「――さあ早く行け、出撃だ。Trigger No.666。」
『Blood Evilだ』
「何でも良いッ!早く行け!!」
『ハイハイ――』

 クロスボウを肩に担ぐ。
 悠々とその門の先、無数の炎と煙の匂い、それに瞳を細めて――わらった。


『 ――――全拘束解除―――― 』
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件名 Dream Land:???
投稿日 : 2021/09/07(Tue) 10:33
投稿者 ■■■■
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 ――此処は硝子の檻。
 響きだけは美しいが、閉じ込められてるのは薄汚いケダモノだし、監視しているのもどうしようもない狂い魔術師や軍人ばかりだ。
 今日も奴らは騒がしい。

「まだ精神統一干渉が出来ないのか」
「無理です――完全にあの"魔眼"に支配されてる」
「魔眼は抜いて捨てろ。外部の呪術が籠もった物なんてろくでもない」
「あの眼を外せば、666は稼働停止します」
「――魔眼が、今の動力源のようです。即ち666の心臓は、眼に在る」
「何だと!?」
「ずっと我々のメンテナンスも受けずに…本来はとっくに稼働を停止しているはずの経過年数――生きていただけ、奇跡でしょう」
「こんな時でもなければもっと解析したいくらいですが――」
「クソッ… 一体どんな腐れ外道に魂を売ったんだ、この悪魔は」

 言ってることが支離滅裂じぇねぇかって、お前らこそ腐れ外道だというのに。また硝子越しに嗤ってやった。
 それが奴らの目に届いてしまったようで、ドンッ!!!と硝子を叩かれた。

「調子に乗るなよ――」

 お前らこそ。
 嗚呼ほら、そんなとこでゴタゴタしてるから、また遠くで酷い爆発音がしていることにも気付いてない。
 大口開けて鴉型の伝令も飛んできたぞ。なきさけんでやがる。

「報告します!カムニア区陥落!!被害甚大なり!!申し上げます!!被害甚大なり!!死者、負傷者ともに不明!!至急、衛生兵および応援部隊を求む――!!」
「…っ!!!カムニア区もやられたか!!それでは前線のフレドリック卿は――」
「ええ、最期まで賊軍に立ち向かい、卿は名誉の戦死を遂げられ――」
「…調整している時間はありません。このまま修復が完了次第、出撃させるしか――」
「制御が効かない以外は、歴代でおそらく一番強い個体です。666は、我々の最高傑作だった――そして此度の脱走の果てに相当の経験値を積んだようです。それを取り戻せただけでも」
「しかし制御ができなければ、その精神を奉仕の精神に統一させねば――牙を剥くかもしれないのだぞ…!?」

 終わらない問答にいい加減に飽き飽きしてきた。
 溜息を吐く。力を抜いた頬が釣り上がって、象るのは笑みだ。

『――――じゃあ雇えばいい』

 そう、僕は口を開いた。

「なッ…」

『雇えばいい。これまでの"傭兵"としての歴、お前らは知ってるだろう?』
『僕に対価を与えろ、それが首輪だ。 僕は――契約を違えない。相応の報酬をくれりゃあ、クソ野郎の味方にだってなるさ』

「このッ…!!!」

 また硝子を叩かれる。そんなに叩いたら、お前らご自慢の魔術強化硝子が割れちまうだろうが。
 あぁ――非力なエルフ族には、どうせ壊せないか。
 そんな風に嘲っていたら、また奴らの癇に障ったらしくて睨まれる。唾が飛んできそうなほどの怒号だ。
 これだから――

「…しかし傭兵としての評判は事実です。確かに我々の軍や領土にも甚大な被害を及ぼした賊ではありますが、一度契約すれば、違えることはない――」
「そんな…物珍しい傭兵だと」

 話が解る奴もいる。
 話の解ってない奴は渋々にこないだと同じように忌々しく僕を睨みつけてきながら、低く発してくる。

「――……何が望みだ、"Blood Evil"」
『クク――解ってくれて助かるよ。 僕もいつまでもこんなところに閉じ込められたくはねぇんだ――』
「早く言え、時間がないんだッ!」

『――カネ。』

 そんな二文字、そんな一単語に、一同は呆気に取られている。
 それが愉快で肩を竦めながら語ってみせる。

『御国の力でたんまりと積めよ。僕はかつての友軍を裏切ることになるからね。だがカネさえあればいい』

『それだけで、十分さ。』
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件名 Dream Land:???
投稿日 : 2021/09/06(Mon) 14:39
投稿者 ■■■■
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 ごぽごぽと、水音がする。
 真暗の視界の中で、泡が浮いては弾けて、溶けていく。

「――何だこの数値は!滅茶苦茶じゃないか!」
「明らかに別の魔術師に体を弄られている」
「そもそも何だ、あの眼は――」
「死霊術師を呼んだ方がいいんじゃないか?」
「何十人も犠牲にしてやっと確保したというのに、嗚呼!」
「こんなヤツ、制御できるわけがない!」

 視界の向こう側で、何人かの男たちの声が聞こえる。
 驚嘆、感嘆、嘆息、怒号、失望――さまざまな感情が届いてくる。
 朧げに浮かび上がるのは、白衣のようなもので、ローブのようなものだった。
 そのどいつもが、長い耳をしていた。

「いいや、今は四の五の言ってる場合じゃない」
「そうだ」
「他の蘇生錬成兵の安定化を急げ!精神統一干渉も忘れるな!!」
「Yes, sir!」

 慌ただしく駆けていく足音がいくつも離れていく。
 そうしてたったひとつの足音が、まっすぐと此方に向かってきた。

 分厚い硝子一枚を隔てて

「"悪魔"め――」

 奴は忌々しく吐き捨てているが
 聞き慣れた罵声だな。最早賞賛ですらある。

 嗤ってやった。
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件名 I reject the end roll.
投稿日 : 2021/08/04(Wed) 18:42
投稿者 ガイーシャ
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どうしてすべて、認識した瞬間に崩れてしまうのだろう。
どうしてすべて、抱き締めたいと思った時にはすり抜けてしまうのだろう。
本当にどうしようもなく、雪みたいに溶けて、解けてく。

どうしてあの群れで、僕は埋められないのだろう。
どうしてあの子だけで、僕は満たしきれないのだろう。
それでも帰る場所があるだけマシだ。
戦場に命を棄てない理由になるからって。
僕が死んではいけない理由として、戒めるために。

焦っても、焦らなくても、無くなる時は無くなって。
いつか来る終わりは、いつ来るかもわからない。
ある日目の前からすべてが崩れてしまうかもしれない。
だからこそ今を大切にしろと人は良く言う。
そうだと思う。

まだわからない?
すべてが不確定要素なだけだ。
それは僕自身も例外ではないけれど。

約束なんて、そんなものだ。
約束なんて、ほんとうはどれも出来ないし、出来たものじゃないと
僕自身がよく知ってるくせに。

愛した瞬間に解ける。
どうしようもなくそれに怯えて泣き崩れる。
みっともないくらいに。

外では取り止めのない雨が流れていた。

遠くで地響きが聞こえた。

どうかそれで終幕にならないでくれと。
どうしようもなく冷たい地面に縋り付く。

――目のない賽子をいくら何度振りなおしたって。
――それは1にすら、ならなかった。
――ただ血のように赤く染まったそいつが、
――無様に転がり落ちるだけ。
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件名 "Hounds pack"
投稿日 : 2021/07/16(Fri) 02:03
投稿者 ガイーシャ
参照先
僕は今日、"群れ"を見つけた。
群れなんて言っちゃあ、彼らには失礼かもしれないが。

声援が確かな力になった。
意志に変わった。
だから、アイツの意志に敗けずにいられた。

今だけかもしれない。
この10日間だけかもしれない。
でも、それでも、しっかり地に足をつけて戦うためには十分すぎる理由だった。

勝利への道を作る。

群れを生かすために働くのが狼の務めだ。
別に負けたからって死ぬわけじゃないが、勝ちたい。勝ち続けなければならない。
僕のために、君たちのために。
だから君たちのために勝利を持ち帰る。持ち帰り続ける。

――紅月練技校に勝利を。
たとえイカレと言われようとも、過激と言われようとも、俗物と言われようとも、
それでも僕たちにしかない団結が、意識が、ある。
闘志が強く立ち昇ってるのは間違いなく僕たちだと、胸張って言えるし、張り合える。

――懐かしくも、慣れた感覚がする。
群れに属する狼の本能。
ひとつの軍団に所属していた僕。
そこも血にまみれ、死の匂いが充満し、臓物すら溢れていた都だった。
しかしどんなに悪徳であろうとも、確かに僕らは仲間だった。
大切な群れの仲間だった。
…それは過去の望郷。

この世界でも、見つけたのか。
たとえこの10日間だけだとしても。
いや、もしかしたら、もっと続くかもしれない。
続けられるかもしれない。

だから
僕は
すごく うれしいんだ。
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件名 pain , pain , pain,
投稿日 : 2021/07/14(Wed) 13:39
投稿者 UNKNOWN
参照先
「夢はあるか?」と問われれば「ない」と答えるほかにないだろう。
最近ようやくそのことに気付いただけで、実ははじめっから、なかったものだ。

夢はない。
夢は見る。
だが、夢はない。

生きる希望。
何かを成し遂げたいという、絶対的な意志。
僕にはそれがない。

それはいつだって泡沫のものであった。
この世界に来る前からも。
…来てからも。

夢はない。
夢は見る。
泡沫の夢を。
懐古の夢を。
すべて易くも脆くも通り過ぎてしまう、擦り抜けてしまう夢を。

僕の歩く先には何もない。
未来というものは、考えたこともなかった。
考える必要のない世界で、生きてきた。
今は考えないと心が壊死するような、そんな果ての都。

元の世界に戻ったとして、また僕は僕を取り戻せるのだろうか?
あの苛烈な永久地獄で、考えることもなく流れて生きる生活に戻ったなら。
僕はまた元通りの僕になるのだろうか?

――それは逃げだって、人はみんな言うよ。

俺[僕]の中で僕がそうやってまた嘲笑った。

――生きて、苦しめよ。そういう教えの元に、僕らは生まれてきた。

左眼がじんじんと痛む。朱色に、金色に、黒に。

――夢がない苦しみに。
――希望のない苦しみに。
――空虚の悦びしかない苦しみに。
――ほんとうに死んでしまうその時まで。

「「「 くるしめ 」」」
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件名 empty , empty , empty,
投稿日 : 2021/07/12(Mon) 03:14
投稿者 UNKNOWN
参照先
――空虚な時がある。
きちんと日常を過ごして、好きに生きて、また笑えるようになって
自分なりにまた愉しく一人で生きられるようになったはずなのに。

ふとした瞬間に、虚しくなる。
静かな澱んだ地下室に、カラカラと響く金属の音。
無造作に広げて、ただそれを見つめ下ろす。色も無く。

――僕はまた僕なりに満たされているはずだ。
愉しい闘争が待っている。
素晴らしき10日間が始まろうとしている。
「彼女」と戦争が出来る。
こんなにも楽しみは、待っているはずなのに。

しかしその先は、それら全てが終わった先で、僕はどうやって生きていけばいいだろうかと、
何を楽しみに、何を愛して、何を、……。

なんて、馬鹿な話。
今まで、先のことなんて考えもせずに生きていたじゃないか。
何でだ。何でだ。

ああ、嗚呼。

そうか。


――喪ってから気付く。
いつもそうだ。
どれだけ僕の中を埋めてくれていたのか。
何もなかった僕を包んでくれていたのか。
歪んで壊れ果てた僕が僕であることを赦してもらえていたのか。

一度埋められて、また穴が開いて。
それはより深く大きくなっていって。
侵食して。

今もまだ慕ってくれるあの子だけでは、もう埋めきれないのだと気づいてしまう。

ガラクタを意味もなく壁に叩きつける。
音がこの閉鎖空間の中で乱反射して閉じこもる。ただそれだけ。
嗚呼、こんなのは、ただの鉄屑。ただのゴミ。活用すれば立派な人を殺す兵器。
…僕と同じだ。

兵器に、心など要らなかったのに。
またそうやって、僕は巻き戻されていく。
それでもすべてはなくならない。
紡いだ縁は途切れることはない。
変わらないまま、苦しみだけが残ったまま、

巻き戻されていく。

穴が開いたまま。
侵食されて。

僕が僕を嘲笑い
僕が俺を嘲笑う
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件名 The world I spent with you, the world I wanted to see with you.
投稿日 : 2021/06/20(Sun) 19:47
投稿者     
参照先

――たとえば、一緒に綺麗なあの打ち上げ花火を見られたなら。

――たとえば、その可憐な姿をみんなと彩ってあげられたなら。

――たとえば、華やかな撫子装いの傍らで紅葉道を歩けたなら。

――たとえば、降り積もった白銀の雪原を共に駆けられたなら。


――たとえば、


――――――――。






「やあ、待たせたね。今日もとびきり美味しい林檎を仕入れてきたんだ。君も食べるだろう?僕の特選だぜ」

 赤々しく瑞々しく爽やかな匂いを纏ったその艶玉を差し出して

「美味しいかい?」

「……わからない、か」

「うん、ごめんね」

「……」

 自己満足だ。

 それでもその小さな箱の前に置いた林檎を引き戻すことはしなかった。

 小さな箱は、いくつもの鮮やかな赤い花で彩られていた。
 この陰鬱で湿気た深い地下室には似つかわしくないほどに、だからこそ燦然と輝いてるかのように見えた。
 
 頑張ってあのマンションで家事をしてた君のことを思い出しながら、不器用にもその白いパーカーを畳んで入れていた。細かく指先を動かしきれなかったのがもどかしかった。
 まだまだ傷も汚れも浅い、それでも始まりの一歩を感じさせる使い込みの真紅色のピストルクロスボウも余りのボルトと一緒に綺麗に収めてあげていた。ちゃんと綺麗に磨きなおしてあげた。お手入れの仕方もしっかり指南するべきだったな、って磨いてる時に思った。
 茜色と藍色で織り成された亀結びの髪飾りは、パーカーの上にそっと載せてあげていた。そのワンポイントの林檎の刺繍とお揃いのような赤。ずっと手にしようかとも思ったけど、あえて一緒にしまっておいた。

 赤ばかり。
 本当に君は、この色が好きだったんだね。
 ――そう、笑ってしまった。

 そんな小さな箱は、誰も開けられないように自分だけの小さな鍵で留めている。
 誰も持っていってしまわないように。
 もう、なにものにも、これ以上、奪われないように。

「なんだか下層はね、賑やかそうだったよ」

「まぁ、そんなことは今はどうでもいいのさ」

 箱の前で膝を抱える、赤黒い外套姿。
 こんな誰にも見つからないようにしてる隠れ家でもフードは被っている。
 こんな時でも目元を隠してるのは無粋?
 無粋かもしれない。見苦しいかもしれない。
 ごめんねって、また口元が微かに笑った。

 ほんとの表情を見せるのが、昔っから苦手だった。
 ほんとの心は、自分でさえわからないことなんて当たり前だった。
 麻痺、劣化、老化、錯乱、破綻者、様々な言い方に替えられてしまえるだろう。
 だから、だろうか。

 いや、いいや、それは、――関係ないんだよね。きっと。

「……君は」

 抱えた膝、二の腕同士を引っ掻くように抱く両腕。
 左腕は握っても機械。
 右腕は握ったら血肉。
 
 爪が食い込み
 目の前の鮮やかな赤には程遠い、穢れきった赤黒い筋が流れて落ちる。

 周りの冷たい床にはそんな痕跡がいくつも乾いて残ってる。
 しようもない吸い殻がいくつも薔薇の香りを残して白い花みたいに散らかっている。

 水晶の燭台は、ただ無機質に揺らめいてこの冥い部屋を照らしていた。

「……幸せだったかい?」

 忘れた言葉を、また重ねた。
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