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『  』
Last Update:2021/12/29(Wed) 01:18

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近況She is coming.
性別
種族人外
私書箱IDmail
写真・画像など1637726526.jpg


 ▼詳細データ
彼女は夜の訪れたばかりのような紫紺の長い髪をしていた。
足首まで覆う髪は、まるで夜会のドレスのよう。
瞳は夕日のような朱色。
その中で、白い飾り気のないワンピースはとても目を惹いた。

彼女はいつも笑っていた。
楽しい時も。嬉しい時も。哀しい時も。怒った時も。
歳の頃は10にも満たないか。
そんな彼女だから、表情も相まって必要以上に幼く見えた。

彼女には声がなかった。
だから、彼女は声の代わりになるものでいつも歌っていた。
雨音。風音。潮騒。喧騒。
なんでも、彼女の声になった。
そして、それらは彼女の声になれば、一時、音を失くした。

彼女の両手には、重い鎖がついていた。
太い手枷。
けれど、その重さなど彼女は感じさせなかった。
足取りに危なげなところもなく、軽く跳ねる身体。
――そう、彼女は怪力だった。

彼女は何も語ることがなかった。
声もなく、文字も持たず、知識は偏り、過去もあるのかないのか。


そして――
彼女には、まだ名前がなかった。


ただ、マーテルに呼び名をもらった。
『プリム』と。
常夜露は食べてもいいと言ってくれた。

でも、置いて行かれるのは怖い。

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