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件名 | : 鍵を掛けた本の一頁 |
投稿日 | : 2022/12/23(Fri) 20:54 |
投稿者 | : フェナカイト |
参照先 | : |
【ディザスターβ】にて【シェリフスター2個】を獲得
【シェリフスター2個】と【ディザスターα】の戦利品【血濡れた白尾】を交換
即座に処理を行う
廃棄
廃棄
廃棄
廃棄
廃棄…
……
少なくとも命ひとつは消えていた。
実際には援護がなければそれ以上だったかもしれない。
労力に対して得られるものは確かに大きいが…これで一回ならあまりに死に迫りすぎている。
いくら医療班が優秀でも彼らも人であり有限。
そも蘇生級のことを現場で成すならどれほどの労力と対価を要求されるのか。
迅速に治すべき戦力は多すぎる。人ひとりにそんなにかけてはいられる現場ではない。
…
……
想像はしていたことだった。
が、あまりにも痛感させられる。
自分があの規格外の戦場に立つこと。
生き延びること。
あの全てを回収できることは、
(黒いインク溜まりが無数に、垂れ込めて)
【シェリフスター2個】と【ディザスターα】の戦利品【血濡れた白尾】を交換
即座に処理を行う
廃棄
廃棄
廃棄
廃棄
廃棄…
……
少なくとも命ひとつは消えていた。
実際には援護がなければそれ以上だったかもしれない。
労力に対して得られるものは確かに大きいが…これで一回ならあまりに死に迫りすぎている。
いくら医療班が優秀でも彼らも人であり有限。
そも蘇生級のことを現場で成すならどれほどの労力と対価を要求されるのか。
迅速に治すべき戦力は多すぎる。人ひとりにそんなにかけてはいられる現場ではない。
…
……
想像はしていたことだった。
が、あまりにも痛感させられる。
自分があの規格外の戦場に立つこと。
生き延びること。
あの全てを回収できることは、
(黒いインク溜まりが無数に、垂れ込めて)
件名 | : 【彷徨う者は死を想わない】 |
投稿日 | : 2022/10/30(Sun) 23:09 |
投稿者 | : ラピス |
参照先 | : |
ラピス・M・ヴェロニカ
Lapis Maria Veronica
白人の人間族 瑠璃色の長い髪と瞳
やけに仕立てのよいゆったりした純白と鮮蒼の衣
20代前半程度 身長160cm程
高い魔力量を持ち、属性は聖属性や光属性に類するもの。
しかし魔術師というより大して力を持たぬ細い町娘のようにも見える。
テセロセルバ大公国のヴェロニカ辺境伯の一人娘。
ヴェロニカ伯爵は国境を護る騎士団の団長も兼任していた。
父の名はラズワルド・J・ヴェロニカ。
フェナカイト・Z・ヴェロニカはとある事情で引き取られたのちにラピスの夫となった。
母はフェナカイトを引き取る少し前に死去した模様。
漂着の寸前までの記憶は「棺に入っていたこと」それについての詳細は語ろうとはしなかった。
父や夫、子供など家族の安否を憂いており、言葉通りなら貴族院ヴェロニカの親族であることは確かだが…
…
……
――以上が、管理局登録時の記録概要である。
黒いカボチャのブローチを身につけていたことから、昨今ギルドにも報告のあった「黄泉還り」現象によって一時的に蘇生していた者と判断、目撃情報も途絶えたことから既に記録は抹消されている。
Lapis Maria Veronica
白人の人間族 瑠璃色の長い髪と瞳
やけに仕立てのよいゆったりした純白と鮮蒼の衣
20代前半程度 身長160cm程
高い魔力量を持ち、属性は聖属性や光属性に類するもの。
しかし魔術師というより大して力を持たぬ細い町娘のようにも見える。
テセロセルバ大公国のヴェロニカ辺境伯の一人娘。
ヴェロニカ伯爵は国境を護る騎士団の団長も兼任していた。
父の名はラズワルド・J・ヴェロニカ。
フェナカイト・Z・ヴェロニカはとある事情で引き取られたのちにラピスの夫となった。
母はフェナカイトを引き取る少し前に死去した模様。
漂着の寸前までの記憶は「棺に入っていたこと」それについての詳細は語ろうとはしなかった。
父や夫、子供など家族の安否を憂いており、言葉通りなら貴族院ヴェロニカの親族であることは確かだが…
…
……
――以上が、管理局登録時の記録概要である。
黒いカボチャのブローチを身につけていたことから、昨今ギルドにも報告のあった「黄泉還り」現象によって一時的に蘇生していた者と判断、目撃情報も途絶えたことから既に記録は抹消されている。
件名 | : 2022.10.26 |
投稿日 | : 2022/10/29(Sat) 18:43 |
投稿者 | : フェナカイト |
参照先 | : |
締め上げる音。軋む音。
血を吐くような叫び声と、か細く呼吸を求める呻き。
「お前は違う、お前は違う、お前は違う…!!」
生きてるはずがないんだ居るはずがないんだ居ていいはずがないんだ生きてはいないんだ死んでるんだ俺の前にいるお前は誰だ偽者だこんな幻を見せる人間は誰だこんな悪辣なものを見せつけてこんなこんなこんな
「ふぇ、なす…」
!!!!
名を呼ぶな化物――!!!
呼ぶな、呼ぶな、呼ぶなァァ――!!!!!
溢れる雫に手も顔も濡らされて、滴り落ちる。
手の中にあった細い首は骨を断たれ力を喪った皮膚の残骸がしなだれかかる。
――自身の下敷きになって力無く横たわる、ぐずぐずになっているヒトガタを色もなく見下ろす。
潤いを失くした瑠璃色の眼球、皮も融けて肉が見える顔、それどころか骨を晒す指先、あらぬ方向に曲がった腕、脚――これは、俺の、せいじゃ、ないはずだ。
だけど、その首は…
何故、こうなったのだろう。
何故、こうなっているのだろう。
何故、何故、何故――?
思い出せない。ここまでに至った全てが思い出せない。
頭が痛い。全身が小刻みに激しく揺れていて震えというものだと認識した。
口の端からは止められない唾液が溢れて、目の端からもなにか溢れているようだった。その感触が気持ち悪くて、きもちわるくて、ひたすらに両手で髪を掻き上げて頭を掻き毟る。違う、こっちは顔じゃない。掻き毟るのはこっちじゃない。
血が出てきた。髪の毛が真っ赤になって手も赤くなっていろんな液体が混ざり合った。
呼吸が辛い。顎を上げても喉が痛い。熱い。自分自身の首も見えない誰かに締め上げられているかのようだ。
浅い呼吸を何度も繰り返し、あらゆる体液を零しながら、なおもヒトガタの上で蹲る。崩れそうな己の胴体を支えるように赤い両腕を回して抱いた。引っ掻いた。服が汚れた。
不和
不和
調和に非ず
肉体と精神への警告
全てが遅すぎる警告
ひどく迫り上がって痰の詰まった呼吸が頬を、口角を吊り上げて、浅く激しく規則的に不規則的に、わけのわからない声を吐き出し続けた。
目玉は乾いて狂いそうなほどに、一切の力を失わぬ瞼は上下左右に痛むほどに。
ボロボロの腐ったヒトガタは未だ肉塊と呼べるほど崩れきってはいない。視界が揺らぐ。その上に自分自身が音を立てて崩れる。
腐肉が顔にめりこむ。全てを吐いてしまいそうなほどの悪臭。
こんな醜悪なものが彼女なわけはなく。
こんな醜悪なものが自分なわけはない。
――もうお前の知る俺はいない。
どこにも、いない。
あの日から、ずっと。
もう、どこにも、いやしないんだ。
血を吐くような叫び声と、か細く呼吸を求める呻き。
「お前は違う、お前は違う、お前は違う…!!」
生きてるはずがないんだ居るはずがないんだ居ていいはずがないんだ生きてはいないんだ死んでるんだ俺の前にいるお前は誰だ偽者だこんな幻を見せる人間は誰だこんな悪辣なものを見せつけてこんなこんなこんな
「ふぇ、なす…」
!!!!
名を呼ぶな化物――!!!
呼ぶな、呼ぶな、呼ぶなァァ――!!!!!
溢れる雫に手も顔も濡らされて、滴り落ちる。
手の中にあった細い首は骨を断たれ力を喪った皮膚の残骸がしなだれかかる。
――自身の下敷きになって力無く横たわる、ぐずぐずになっているヒトガタを色もなく見下ろす。
潤いを失くした瑠璃色の眼球、皮も融けて肉が見える顔、それどころか骨を晒す指先、あらぬ方向に曲がった腕、脚――これは、俺の、せいじゃ、ないはずだ。
だけど、その首は…
何故、こうなったのだろう。
何故、こうなっているのだろう。
何故、何故、何故――?
思い出せない。ここまでに至った全てが思い出せない。
頭が痛い。全身が小刻みに激しく揺れていて震えというものだと認識した。
口の端からは止められない唾液が溢れて、目の端からもなにか溢れているようだった。その感触が気持ち悪くて、きもちわるくて、ひたすらに両手で髪を掻き上げて頭を掻き毟る。違う、こっちは顔じゃない。掻き毟るのはこっちじゃない。
血が出てきた。髪の毛が真っ赤になって手も赤くなっていろんな液体が混ざり合った。
呼吸が辛い。顎を上げても喉が痛い。熱い。自分自身の首も見えない誰かに締め上げられているかのようだ。
浅い呼吸を何度も繰り返し、あらゆる体液を零しながら、なおもヒトガタの上で蹲る。崩れそうな己の胴体を支えるように赤い両腕を回して抱いた。引っ掻いた。服が汚れた。
不和
不和
調和に非ず
肉体と精神への警告
全てが遅すぎる警告
ひどく迫り上がって痰の詰まった呼吸が頬を、口角を吊り上げて、浅く激しく規則的に不規則的に、わけのわからない声を吐き出し続けた。
目玉は乾いて狂いそうなほどに、一切の力を失わぬ瞼は上下左右に痛むほどに。
ボロボロの腐ったヒトガタは未だ肉塊と呼べるほど崩れきってはいない。視界が揺らぐ。その上に自分自身が音を立てて崩れる。
腐肉が顔にめりこむ。全てを吐いてしまいそうなほどの悪臭。
こんな醜悪なものが彼女なわけはなく。
こんな醜悪なものが自分なわけはない。
――もうお前の知る俺はいない。
どこにも、いない。
あの日から、ずっと。
もう、どこにも、いやしないんだ。
件名 | : 2022.10.25 |
投稿日 | : 2022/10/29(Sat) 18:38 |
投稿者 | : フェナカイト |
参照先 | : |
"――こんなこと、あるはずがない。"
当主の知己でもある衛兵の少年の力もあってとうとう貴族院の…ヴェロニカ家に通してもらえた瑠璃色の髪の女は、当主――かつての狐の青年の姿に瞳を潤ませて震える。
狐の青年の方は、ただ茫然と立ち尽くしていた。信じられないものを見る目だった。
そんな目にも気付いてない女は飛び込む。青年を確かめるようにも、両腕を伸ばして、回して涙を溢れさせる。
女の瑠璃よりは明るい蒼に染まった狐の眼が揺らぐ。わけもわからない呼吸の乱れが喉奥からせっついて吐き出される。
直視はおろか、その細い体に手のひとつも差し出せなかった。
どんな感情よりも先に恐怖がせりあがってしまう。
どうして。何故。何故。何故。何故、何故、何故、何故、――――
女が色々喋っている。次々に何か言葉を口にしているが、到底飲み込めずに何もかもが聞こえなかった。
女に、尻尾はどうしたのかと聞かれた、そのことだけはやけにはっきりと届いて、びくりと指先が震える。ただでさえ白い顔が、血を失ったかのようだった。
女は、男の様子に心配して気遣うように白い髪を撫でる。
いつかしたようにその狐耳を撫でる。
"――それにすら怯える己がいる。"
遠くから見守っていた使用人が口を開いて、男の名を呼ぶ。
「どうされますか」と、無機質な声。そんな声で厭な耳鳴りも遠のき、現実に帰る。
「…休んでいてくれ。身寄りも…ないんだろ」
男はそっと女の肩を掴んで、ゆっくりと離した。
視線も合わさない。名前も呼ばない。女は不思議そうに男を見つめていたけれど、自分の取り乱しぶりを思い出し恥じるようにしながらもはにかむように頷いた。
男は、女のことを使用人に任せた。
使用人は女に食事や着替えを用意する。風呂にも案内した。空き部屋を寝床として勧めた。他人とはいえ同性だからか互いに馴染むのにそう時間は掛からなかった。
やがては談笑の声も聞こえるようになってきた。
男は自室で一人項垂れる。
ありえないはずのこと。でもこの都ならば、ありえるのかもしれないこと。
だけど、受け入れられない。恐怖すらある。何に怯えているのか、言語化もしたくなかった。
頭を抱える。耳を塞ぐ。…蹲る。
当主の知己でもある衛兵の少年の力もあってとうとう貴族院の…ヴェロニカ家に通してもらえた瑠璃色の髪の女は、当主――かつての狐の青年の姿に瞳を潤ませて震える。
狐の青年の方は、ただ茫然と立ち尽くしていた。信じられないものを見る目だった。
そんな目にも気付いてない女は飛び込む。青年を確かめるようにも、両腕を伸ばして、回して涙を溢れさせる。
女の瑠璃よりは明るい蒼に染まった狐の眼が揺らぐ。わけもわからない呼吸の乱れが喉奥からせっついて吐き出される。
直視はおろか、その細い体に手のひとつも差し出せなかった。
どんな感情よりも先に恐怖がせりあがってしまう。
どうして。何故。何故。何故。何故、何故、何故、何故、――――
女が色々喋っている。次々に何か言葉を口にしているが、到底飲み込めずに何もかもが聞こえなかった。
女に、尻尾はどうしたのかと聞かれた、そのことだけはやけにはっきりと届いて、びくりと指先が震える。ただでさえ白い顔が、血を失ったかのようだった。
女は、男の様子に心配して気遣うように白い髪を撫でる。
いつかしたようにその狐耳を撫でる。
"――それにすら怯える己がいる。"
遠くから見守っていた使用人が口を開いて、男の名を呼ぶ。
「どうされますか」と、無機質な声。そんな声で厭な耳鳴りも遠のき、現実に帰る。
「…休んでいてくれ。身寄りも…ないんだろ」
男はそっと女の肩を掴んで、ゆっくりと離した。
視線も合わさない。名前も呼ばない。女は不思議そうに男を見つめていたけれど、自分の取り乱しぶりを思い出し恥じるようにしながらもはにかむように頷いた。
男は、女のことを使用人に任せた。
使用人は女に食事や着替えを用意する。風呂にも案内した。空き部屋を寝床として勧めた。他人とはいえ同性だからか互いに馴染むのにそう時間は掛からなかった。
やがては談笑の声も聞こえるようになってきた。
男は自室で一人項垂れる。
ありえないはずのこと。でもこの都ならば、ありえるのかもしれないこと。
だけど、受け入れられない。恐怖すらある。何に怯えているのか、言語化もしたくなかった。
頭を抱える。耳を塞ぐ。…蹲る。
件名 | : 2022.10.24 |
投稿日 | : 2022/10/29(Sat) 18:37 |
投稿者 | : フェナカイト |
参照先 | : |
貴族院の門前、尋ねてきた女に応対する使用人の会話
「…親族かもしれない、ですか? 誠に申し訳御座いませんが、当主フェナカイトはお休みになられてます。言伝であれば承ります」
「ラピス・M・ヴェロニカ。はぁ…そのような名前を聞いたことはありませんが。そもそも彼から親族の話は――いえ、真偽は当主に伺っておきます。今日のところはどうぞ、お引き取りを」
「…?どうされましたか。……」
「――……。行きましたか」
「――――フェナカイト様、この話は本当なのですか?」
「…そうですか」
「私見として彼女はおおよそ悪戯のようには思えない態度を取られていました。あれを演技と呼べるのでしょうか」
「……畏まりました。警戒を、強めておきます」
「…親族かもしれない、ですか? 誠に申し訳御座いませんが、当主フェナカイトはお休みになられてます。言伝であれば承ります」
「ラピス・M・ヴェロニカ。はぁ…そのような名前を聞いたことはありませんが。そもそも彼から親族の話は――いえ、真偽は当主に伺っておきます。今日のところはどうぞ、お引き取りを」
「…?どうされましたか。……」
「――……。行きましたか」
「――――フェナカイト様、この話は本当なのですか?」
「…そうですか」
「私見として彼女はおおよそ悪戯のようには思えない態度を取られていました。あれを演技と呼べるのでしょうか」
「……畏まりました。警戒を、強めておきます」
若い当主が一人と、使用人が一人。
使用人については以前はもう何人か居たこともあるようだが、めっきり見ることはなくなった。
以下、秘匿情報。