雪の積もった空き地にて、フィオナさんに会った。

いつもの姿ではなく、この都で過ごしやすくするための『二つ目の姿』で遭遇したんやけど……。
色々反省やな。気付かれなかったっちゃ気づかれなかったんやけど、色々想定が甘かったっつーか、練り込み不足を感じた気がする……。

ある程度違和感もたれない様に洋装で西洋人、多少変な事やっても子供だからで許される様に歳を下げた所までは良かったんやと思うけど、色々聞かれたりすると苦しくなるなー。
後、初手で名前を呼んじゃったし。

それはともかく、子供が一人で出歩いとるんやから、色々心配して親切にしてくれたんやろな。
一緒に雪だるま作って、途中まで一緒に帰ったわ。
……フィオナさん、ほとんど仕事終わりの後やったっぽいのに、面倒見がえぇなぁ。

もちっとキチンと演じて、言葉も上手く喋れる様になったら、こっちの姿でも仲良くしていきたいなぁ。

歯車亭にて、ベイさんに会った。
正しくは、ベイビルさん……ベイビェルさん？　ベイヴィルさん？　……発音が難しすぎて、日本の文字ではよぉ書けんかもしれない。
好きに呼んでいいと言ってくれたから、お言葉に甘えて『ベイさん』と呼ぶ事にした。

結構昔にも会ってたっぽいけんど、何だかすっかり忘れてしまってたみたいやなぁ。うちが来たばかりで、小遣い稼ぎで草鞋とか売ってた頃に会ってたか……正直思い出せへん……。

元の世界の話、帰りたいのか帰りたくないのか、この世界の話なんかをした。
長い事この世界にいたせいで、帰るとなると寂しさも感じるようやったけど……うちからしちゃ、ぶっちゃけたぬきだって事がバレてすたこらさっさして次の場所！　って生き方だったから、寂しさに関してはちょっと分からんトコあったなぁ。……いや、そりゃ、この都で会った人とはもう二度と会えない！　ってのは分かるけれども……。
そこんとこは、うちが人間相手だと線引きしとるからなぁ。所詮うちはたぬきで、相手は人間なんやもん。

じゃがいもを持ち帰りたいとか、雪でも滑らない履物が欲しいとか言うとった。
藁靴を試してみたいとの事なので、じゃあ作ろうかという話になったから、前金を受け取った。
そこそこ大変やけど、最初の一個の試しって意味じゃ代金無くてもえーかなって思っとったけど、ちゃんとしたお人だ。
……や、闘技場でノリノリの実況をしとった人って印象やったけど、見たとこ西洋のおサムライさんって感じやから、ちゃんとした人なんやね。

それはともかく、代金受け取ってもうたんやから、早めにちゃんと作らんとなぁ。

今日は都の訓練所でアミッドさんと会った。

この帳面を付ける前に起きた事件で知り合った、メイド服を着て、苦無やら他にも色々使っていた、明るい女性だ。

彼女の事を語る前に、ジーナスさんについても書かなきゃ始まらん。
ジーナスさんは、キツネや。
ただ、流石色々な異世界から流れ着く世界というか、うちの知っとるキツネとは、大分異なるみたいで、どーにも……こう、偏見？　で色々言ってまうせいで、かみ合わん所がある。
別にうちがたぬきだからってどうこう言ってくるわけでも、ケンカになるわけでもないし、そもそも化かし合いをする風でもない。
世界が違うからか、ものすごい、どうやってんのかもわからんカラクリを作っとるキツネや。ハカセって感じか？

まぁ、今回出会ったのはアミッドさんであって、ジーナスさんやないから、ジーナスさんについてはまた会う機会があって、気が向いたら改めて書こう。

アミッドさんはジーナスさんのメイドで、カラクリ人形だそうだ。……驚く事に見た目も立ち振る舞いも人間と変わらん。
『なんちゃって忍者ガンナーメイドロボ』…なんやそう。ホンマ何をどうすりゃ見た目も立ち振る舞いもホンマに人間そのものなカラクリが出来るやら。

けんど、普通に明るいお姉さんって感じやし、メイドなら傍にいても違和感ないし、忍びの暗器も拳銃もメイドの外見を損なわないから、理に適ってるんやろな。

色々とジーナスさんや自分の話をしたりして、やっぱ異世界のキツネって事で色々違うんやなーと再確認した感じ……やけど、やっぱ自分の中にあるキツネ像で、色々喋ったり動いてまうな。

……ジーナスさん、生のネズミとかカエルとかイケるんやろか……？　悪戯ネタで一つ試してみたいなぁ。

Skebにて、依頼して描いて頂いた物のリンクとなります。

駆立ち絵
https://skeb.jp/@nekobullet/works/9

駆変化
https://skeb.jp/@nekobullet/works/10

もしかしたらあったかもしれない元の世界での過去の姿
https://skeb.jp/@Neriedor/works/298

うちは火抜駆。
化け狸やけど、時たま日記みたいなモンを書こうかと思う。

後で読んだ人には、信じられへん事やって思うけど、うちは今、日本なんてものが無い、全く違う世界にいる。
何でそんな事になったのか、うちにも分からん。
けんど、いずれ、いつか帰るつもりや。

そん時、出来れば土産の一つも持って帰りたいって事で、思いついた一つが日記やった。
大変な目にもあう事も多くて、これを書き出す前にも色々あったんやけど、土産や確かな思い出がほしいと思えるくらいには、楽しくやっとるし、こっちの世界も好きになってきたんやなって、書いてて思う。
余計な荷物は持たん主義なんやけどな、うち。
ちなみに、和綴じ本以外にもいろんな種類の帳面があったんやけど、なんか…未来？　似た歴史を辿った世界の未来？　から来とる人もおるから、あんまり新しい作りの本にしちゃうと、逆に作り話っぽさが増える可能性も考えて、和とじの帳面にした。

日本に帰って、誰かに読ませた所で、作り話だって笑い飛ばされるだけやろうけど、下手に残ったら化け狸の作り話やと思って笑ってくれたら、それはそれでおもろいからえぇかもしれんなぁ。